社会福祉法人敬天会
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会社名 社会福祉法人敬天会 業種 医療・福祉 住所 鹿児島県姶良市加治木町木田1395番地16 従業員数 155人(うち正規従業員 91人) 女性従業員比率 58% 正規従業員に占める女性比率 45% 女性管理職数 8人(女性管理職比率 40%)
女性活躍やジェンダー平等に取り組んだきっかけ・経緯
当法人は、昭和45(1970)年に設立し、翌年、旧姶良町北山に知的障害者更生施設を開所しました。約40年自然に囲まれた環境の中で事業運営を行ってきましたが、ご利用者の皆さまにとって社会参加の機会が増えるよう平成21(2009)年に加治木町木田へ移転しました。障害のある方が住み慣れた場所で安心して暮らせるよう、ご利用者のニーズに合わせた障害福祉サービスを提供しています。
障害福祉制度は、平成17年の自立支援法制定から、障害の捉え方が大きく変わり、人権を尊重する視点で法の整備が進められてきました。また、重度の障害がある方に対しての専門的な支援も研究が深められています。
しかし、福祉・介護サービス分野においては、人材不足が常態化しており、人材を安定的に確保することが難しい状況が続いています。そのため、当法人では、職務の仕分けと併せて、細分化した勤務時間帯の設定を進め、未経験者やパートタイム労働者の採用も随時行っており、現在9事業所で約150名の職員が働いています。
また、障害がある方が安心して暮らせる環境を整え、福祉ニーズに対応したサービス提供を継続して行えるよう、令和2年度には高齢で重度の障害がある方向けの日中支援型サービスのグループホームと医療的ケアの必要な重度障害児のための通所事業所を開所いたしました。
業務の内容はご利用者の日々の生活を支援することですが、対人援助の現場は、支援者にとって精神的にも肉体的にも負担が大きくなります。人材の流出を抑えるために、全職員が社会福祉法人に求められる社会的な役割を理解し、ご利用者主体のサービス提供ができるよう人材育成に取り組みました。
当法人では、全職員の共通理解を図るため平成30年に経営理念を刷新し、安心して働き続けられる職場風土づくりに取り組みました。また、職員に対しキャリアアップの道筋と階層を明確に示し、各事業所に課長、リーダー、マネージャーという役職を配置しています。しかし、事業所が増えたことで全事業所に各階層の役職者を配置できないという課題が生じました。専門的な知識と経験のある人材確保もできるようになりましたが、新しい環境で責任とプレッシャーにストレスを感じることがないよう、定着までの時間をゆっくり醸成させていくことを意識したサポートを心がけています。
現在、鹿児島県内初のトリプル認定(くるみん認定・ユースエール認定・もにす認定)企業となり、年齢や性別、障害の有る無しにかかわらず、働きやすく働き続けられる環境が整ってきています。
主な取組とその効果
- 職場内研修を充実させ、とくに新規採用職員が働く上で感じる不安の軽減に繋げました。また、自らの成長を望む職員が学べる機会の場を創出しています。
- 年間の研修スケジュールは、勤務時間内に受講できるよう計画し、キャリアアップに必要な外部研修の費用を法人が負担しています。また、資格取得支援貸付制度もあり、自ら学びたいと思う職員をサポートしたことで、資格取得に繋がっています。
- 職場内研修にキャリアガイダンスの講座を設け、自己理解を深める機会を作りました。また、キャリアガイダンス受講後にキャリアコンサルティングを実施することで、生きがい、働きがいを再確認する機会を設けています。子育てがひと段落し社会復帰をされた方々の中には、自己肯定感が持てず現実社会と職場環境の変化に距離を感じながら復帰をする方も多くおられます。社会から必要とされていることを実感できたことで働く意欲を持ち、職場への定着に繋がっています。
- 産休・育休の取得促進と職場復帰の支援を行い、職場内等に情報発信することで休業を取得しやすい雰囲気を醸成しました。育休取得者から「休業中、職員間の情報共有アプリで事業所内の様子がわかることや事務担当者と手続き等のやりとりで繋がりが持てたことで安心感が得られた」という声も聞かれました。休業中「社会から切り離されているような感覚に陥る」という感想を持つ方が複数いたこともあり、休業者の気持ちに寄り添えるよう努めていきたいと考えています。令和4年度は延べ12名の職員(男女問わず)が育児休業を取得しました。
- 「まだまだ子どもや家族との時間を大切にしたい、けれど、社会と繋がっていたい」との思いから短時間勤務を希望される方も多くおられます。個人の生活スタイルに合わせた雇用契約を結ぶことや休暇などの福利厚生も充実させたことで、女性の職員数が増加しました。
- 2021年から3月8日国際女性デーと連動させて、ジョイセフ(女性の健康と権利のために活動する国際協力NGO)が2016年から発足したチャリティアクション、「ホワイトリボンラン」へ参加しています。ホワイトリボンが掲げる「すべての女性が健康で自分らしく生きられる世界」を目指し、法人内でも支援の輪を広げています。
このような取り組みが職場内に広がることで、コミュニケーションの活性化にも繋がり、性別を問わず活躍ができるきっかけや風土をつくっています。
取組を進めるにあたっての苦労・工夫
経営理念刷新の際に、求める職員像を明確にしたことで、対人援助に関心のある方の求人応募が少しずつ増えてきました。しかし、障害がある方に対する支援では専門的な知識も必要となるため、自ら学びたいと思える職場の風土づくりが大切だと考えました。対人援助の支援では、他者の価値観を尊重することが大切になりますが、自分の価値観との差異にギャップを感じ葛藤する場面も多々あります。ご利用者主体のサービス提供を心掛けながら支援を行い、そして、自分自身と向き合う心の余裕も持てるよう、上司や先輩職員と振り返りの機会を重ねています。
今後の課題・展望
- ご利用者のみなさんが、安心して暮らせる環境があることで笑顔が増えていきます。笑顔が溢れることで支援する職員にも笑顔が広がります。働き続けたいと思える職場風土があれば、将来の福祉人材も増やすことができると考えています。
- キャリア教育の一環として小学生から専門学校等の学生に向けて職場紹介の機会をいただくことも増え、体験や講話を行っています。
- 誰もが自分らしく暮らせる共生社会の実現は、障害がある方が安心して暮らせる環境を支えるための人材を増やすことと、男女共同参画の視点を基盤に職員が安心して働き続けられ、自らの成長を望み、法人と職員が互いに支え合うことで協働する関係づくりという両輪で風土を醸成させていきたいと考えています。
トップメッセージ
社会福祉法人 敬天会 理事長 大友 良治さん
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私たちは、『共生社会づくりの力強い担い手となる』ことを活動の基本理念としており、地域の皆さまと協力し合い、互いの課題解決に取り組みます。そのためには、私たち自身が連携し合える力を蓄えることが必要です。
職員の細かな気くばりや優しさ等多様な視点から介護スキルを高め、様々なニーズに対応するチームケアのリード役を期待します。女性活躍の場を整え、推進することは、社会の成長発展に大きな役割を果たすことを確信します。
インタビュー(女性従業員の声)
共に成長していける職場です
障害者支援施設さちかぜ マネージャー 長井 史世(2004年入職)-
私が入職したころは、旧制度による知的障害者更生施設とグループホームを運営する法人でしたが、法整備が進むと同時に、現在では障害のある未就学児から高齢者まで幅広い年代の方が地域生活を営むために必要なサービスを提供できる法人となり、私たち職員も知識、スキルを学び成長し続けています。また、職員自身のライフステージにおいても、出産、育児、介護をしながらも働き続けられる制度やキャリア支援が整えられ、私自身も産休・育休を経て、現在も育児と仕事を両立しています。
これからも、一緒に働く仲間を支えながら、ご利用者に、より質の高いサービスを提供していきたいと考えています。